1人で会社を設立するメリット
個人事業主ではなく、自分1人で会社を設立するメリットとはなんでしょうか?
ここが理解できれば、独立したい方にとっては背中が押されるのではないかと思います。
会社設立のメリットを以下に6点挙げていきます。
①社会的な信用が増す ②(合名会社を除き)有限責任になる ③報酬や決算期が自由に決められる ④赤字の繰越期間が延びる ⑤支払う税金が安くなる ⑥節税対策の幅が広がる
①社会的な信用が増す
「代表取締役」
カッコいい響きですよね。
個人事業主でも、〇〇商店や△△事務所などといった屋号をつけることはできますが、会社を設立すれば社員が社長1人でも「□□株式会社 代表取締役」と名乗ることができます。
また、代表取締役ですので社会的な信用が増すことになります。
事業計画書などにも厚みと信頼感が出てくるため、融資などを受ける際にも有利に働きますし、他社との契約も全て法人契約となるため締結もしやすくなります。
②有限責任になる
株式会社や合同会社を設立する場合、会社の債務に対して出資した金額以上の責任を負う必要はありません。
1,000万円の債務が返済できず倒産してしまう場合でも、出資金(資本金)が500万円であればそれ以上の責任を負いません。
しかし、個人事業主であれば無限の責任を負うため、お金がなくてもその債務を返済する必要があります。
リスクが高いですよね。
したがって、事業が大きく成長した場合は会社を設立し、有限責任にしてリスクを抑えた方が良いことになります。
③報酬や決算期が自由に決められる
会社には会社法というものがあり、社長の報酬(役員報酬)は、株主総会で決めることが定められています。
社員が社長1人の会社であれば、社長=株主なので、誰に相談することもなく好きなように決めることができます。
しかし所得税と法人税のバランスを考えないと納税金額が増えてしまいます。
このバランスを考えるには当ブログの「税金の知識」をご参照ください。
また、社長報酬は毎月定額であること、事業年度開始日から3か月以内に決めることが必要です。ボーナス(役員賞与)も、事前に税務署へ「事前確定届出給与に関する届出」を提出しておくことで、経費として認めてもらうことができます。
設立時に決算期を自由に決めることができるため、経費節減や節税対策につながります。
④赤字の繰越期間が延びる
赤字(欠損金)が出た場合、その赤字を翌年以降にも繰り越すことができ、翌年以降の利益からその分を差し引くことができます。
つまり前年は赤字で苦労したが、翌年は前年の苦労した赤字分を利益から控除して計算することで、支払う税金を安くすることができるのです。
人生落ありゃ苦もあるさの逆ですね。
さらに言うと、個人事業主は青色申告をすることで、赤字を3年間にわたり繰り越すことができますが、法人の場合は10年間にわたり赤字を繰り越すことができます。わおっ!
⑤支払う税金が安くなる
個人事業の所得税の税率は、課税される所得金額(税引き前の利益)が
695万円を超えると23% 900万円を超えると33% 1,800万円を超えると40%
と所得が上がれば税率も上がっていきます。
一方、中小企業の法人税率は、課税される所得金額が
800万円以下で15% 800万円を超えると23.9%
となっており、利益が大きくなれば支払う税金が安くなります。
⑥節税対策の幅が広がる
会社を設立することで、個人事業主には認められなかったものが認められるようになります。
報酬は給与所得控除ができる他、出張の日当も経費になり、法人契約とすることで生命保険料や自宅も社宅として経費化できるなど、節税対策の幅が大きく広がります。
このように会社を設立するとメリットが大きいと思われるかも知れませんが、どんなものにも多少のデメリットはあります。次からは会社設立のデメリットを見ていきます。
1人で会社を設立するデメリット
会社設立によるデメリットは以下に3点挙げます。
①設立や運営にコストがかかる ②税務申告が複雑になる ③社会保険の加入が義務付けられる
①設立や運営にコストがかかる
会社を設立するには定款の作成や認証、登記登録等が必要となります。
全部自分で行ったとしても、登記申請にかかる登録免許税は株式会社で15万円程度(合同会社は6万円程度)かかります。
また、法人都道府県民税や法人市町村民税が合計で年7万円程度支払う必要があり、設立やその後の運営にはコストがかかります。
②税務申告が複雑になる
個人事業主の税務申告は、青色申告の場合は決算書と確定申告だけで処理されます。
しかし会社を設立すると、総勘定元帳、決算書、領収書綴り、法人税や消費税の申告書等々、提出に必要な書類が増えます。
そのため、社長1人では知識も乏しかったり手が回らなくなったりして税理士に依頼することも多いのが現状です。
その際の打合せに時間が取られたり、費用がかかったりしてしまいます。
③社会保険の加入が義務付けられる
個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入しています。
会社を設立した場合、健康保険は「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」か、「組合管掌健康保険(組合健保)」のどちらかに加入することになります。
年金については、会社を設立した場合は厚生年金保険を国民年金に加算することになり、その上乗せ分の年金保険料を支払う必要があります。
また、社会保険料については、給与天引きですが個人が支払う額と同額を会社が負担することになるため利益を圧迫することになります。
ここまでデメリットをまとめてきました。
独立したい方は、デメリットを超えるメリットがあると考えるのか、リスクを伴わないようにするのか、個人事業主か会社を立ち上げるのかの判断が問われてくることになります。
次は会社を立ち上げると決断した場合、設立に当たっての注意点をまとめていきます。
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