太陽光パネルの廃棄ピークは2040年頃!~環境にやさしいはずの太陽光発電は環境にやさしくない特別管理産業廃棄物となってしまう可能性あり~

経済の知識

2012年7月にFIT法が導入され、急速に太陽光発電が広がりました。太陽光パネルの寿命は25~30年程度とされています。したがって、FIT法導入以後にスタートした太陽光発パネルは2037年~2042年頃から設備廃棄物が出てくることになります。今回はこの廃棄物に着目してまとめていきます。

環境にやさしい太陽光発電は環境にやさしくない可能性があった!

皮肉なものですが、再生可能エネルギーとして「環境にやさしい」を謳っている太陽光発電ですが、太陽光パネルの種類によっては有害物質が含まれている可能性も指摘されています。

これって本末転倒?

この矛盾している点を是正するため、2017年4月の改正FIT法では、適切な廃棄処理が行われるように、新たな基準が設けられました。FIT改正法の内容については一部ではありますが後述します。

太陽光発電の「廃棄物」とは?

太陽光パネルは種類によって鉛、カドミウム、セレンといった特別管理産業廃棄物(※)が含まれています。

※揮発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある性状を有する産業廃棄物のこと

この太陽光パネルの廃棄に関して問題視されているのは以下の点です。

①【事業者】廃棄の基礎知識が足りないこと。また将来的な廃棄を想定して、廃棄やリサイクル費用を確保していない事業者が多いこと

事業者に義務付けられていることは以下に記載されています。

総務省による報告書

https://www.soumu.go.jp/main_content/000506235.pdf

事前に産業廃棄物になるということを把握していないと、廃棄費用の準備ができず、資金不足から不法投棄のリスクが高まる可能性があると言われていますが、本当にそうなのでしょうか。

調査した12県市の廃棄物担当部局においては、太陽光パネルの不法投棄事例は確認されていないと報告されています。

②【メーカー】パネルメーカー側がきちんと情報開示をしていないこと

2017年に行った総務省の調査では事業者の約8割が有害物質情報を提供していないとの回答でした。

③【処理業者】産業廃棄物処理業者が廃棄物受け入れ時に確認をしていない割合が高いこと

産業廃棄物処理業者も、受け入れ時に確認をしていないという回答が6割。有害物質の有無を知らないまま産業廃棄物処理業者に回してしまい、不適切な処理が行われるケースもみられています。

たとえば、本来は水漏れをふせぐ設備のある「管理型最終処分場」という場所での埋め立てが望ましいのに、そうではない処分場に埋め立てている、といったケースです。

事業者・パネルメーカー・産業廃棄物処理業者の3者でどうやって連携して廃棄物を適切に処分していくかが課題となっています。

2017年の総務省の報告書に、廃棄に関する現状の調査結果がまとめられています。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000506235.pdf

その他にも、太陽光発電設備の廃棄にあたっては最終処分場が逼迫するのではないかと懸念されています。

2040年以降は大量廃棄のピークが来ると考えられています。太陽光パネルの寿命を25年として経済産業省が計算したところ、2020年には2,800トン、2040年には80万トンに及ぶのではないかと試算されています。使用済みの太陽光パネルの年間排出量が、産業廃棄物の最終処分量の6%に及ぶともいわれています。

しかし、安心してください。2017年4月施行の改正FIT法では、設備の撤去や廃棄費用の計画が義務付けられ、廃棄まで考慮した運営が行われるように改善されました。具体的には調達価格のうち「資本費の5%を廃棄等の費用として計上し積み立てる」という努力義務を設けています。

しかしながら努力義務であり罰則や強制力がないため、実行している事業者はほとんどいないようです。経済産業省のデータでは、低圧(50kW未満)のうち、積立を行っているのは14%の事業者に留まっています。大規模設備となる高圧(50kW以上)では、26%の事業者が積み立てを行っており、廃棄時のリスク回避傾向が窺えます。しかしながら3割に満たない数字となっていることから、今後廃棄に関する新たな義務が設定される可能性はあります。

2018年4月以降は、撤去や廃棄の計画を立てることに加え、積み立ての開始時期と終了時期、毎月の積み立て計画などの項目が増えました。さらに2018年7月からは定期報告を義務化し、進捗状況が把握できるように改善しました。必要に応じて、指導や改善命令なども行われています。

太陽光パネルの廃棄にかかる費用

産業廃棄物としての処理に関しては改正FIT法である程度はクリアになりましたが、皆さんが気にされているのは太陽光パネルの廃棄はどの程度費用がかかるの?ということだと思います。まず費用の内訳から見ていきます。考えられるのは、以下の4つです。

①撤去費(人件費含む)

②(屋根の場合)足場代・屋根の修復費など

③運搬費

④処分費

まず必要なのが、撤去費です。撤去の際は業者に依頼するため人件費がかかります。オフィスや工場の屋根に設置している場合には、足場代や屋根の修復費なども考慮しなければなりません。そして、処分場までの運搬費用、処分費用などもかかります。

廃棄費用は今後変更される可能性が高いですが、経済産業省のデータによると2012年度は1kWあたり1.7万円とされています。例えば設置容量が50kWの場合は、85万円程度の費用が必要になります。廃棄間近になって慌てて準備するには高額です。廃棄費用も事前に組み込まれた投資計画を打ち出しているプランもあり、安心できる材料かと思います。

太陽光パネルの廃棄に対する新たな展開

最終処分場の逼迫を防いだり有害物質を出さないようにするためには、再利用の技術拡大が重要となります。太陽光パネルは、ガラスやシリコンなどさまざまな素材で作られていますが、再利用するには、これらの素材を分離する必要があります。現在の技術では、かなりのコストが掛かってしまいます。さらに太陽光発電は歴史が浅く、リサイクル費用の負担を軽減するための仕組みが確立されていません。

そこで、技術開発を行うことにより、リサイクル費用を抑えたり、リサイクルの循環を明確にする流れを作ることが重要となってきます新たな太陽光パネルの循環はこれから作られてくると思われます。

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、太陽光発電のリサイクル社会構築、発電コスト低減のため、2015年にプロジェクトを始動しました。2017年にはパネルのリサイクル事業が動き出し、力を入れている事業の1つとなっています。

太陽光パネルの製造装置を開発しているNPCでは、「ホットナイフ」と呼ばれる250度に加熱した刃で、パネルのガラスと電池部分を切り離す技術を開発しました。従来は難しかった技術が可能となったことで、ガラスや銀などの回収でき、リサイクル事業も伸展する可能性が見えてきました。

今後は「廃棄せずに設備を買い取ってもらう」という選択肢も出てくる可能性もあります。こまめにメンテナンスを行い、できるだけ高く買い取ってもらえるようにしておくのも、廃棄費用を抑える1つの手段として考えられるでしょう。

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