小規模企業共済は「退職金の積み立て」+「節税」のダブル効果!

税金の知識

「小規模企業共済」は「社長自身の退職金の積み立て」と言い換えることができます。しかも「節税効果」もあるというところが魅力の1つかと思います。ダブル効果!退職金の積み立てが節税につながるなんて夢の話です。今回はその「小規模企業共済」について勉強したことをまとめます。

小規模企業共済とは

小規模企業共済制度とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している小規模企業の経営者や個人事業主等のための積み立てによる退職金制度のことを言います。中小企業の経営者が将来事業を廃止した場合でも、一定の退職金を受け取ることができるようになるため中小企業の安心を担保してくれる共済制度となっています。

小規模企業共済のメリット

①掛け金の最大120%が戻ってくる

掛け金の納付期間にもよりますが、解約時には掛け金として納付した総額の最大120%相当額が戻ってきます。これによって、将来、事業を廃止したり、小規模企業の経営者が退職した場合における収入の不安を解消することが可能となります。しかも、その共済金については、一括で受け取ることも、分割で受け取ることも可能とされているため、柔軟性があるという点はメリットかと思われます。

②掛け金が経費として認められる

小規模共済制度の掛け金は、その全額が小規模企業共済等掛け金控除として、所得から控除することが認められ、節税につながるというメリットがあります。年間84万円までなら全額控除できます。一般の生命保険は上限4万円しか控除できません。84万円控除はすごくありがたい節税対策ですね。この掛け金相当額を役員報酬に上乗せして、この掛け金を含めた役員報酬額を経費として計上することで、実質的に掛け金を経費として処理することができることになります。

③共済による支払いについても税金が軽減される

個人事業者が廃業したり、小規模企業の経営者などが会社を解散したり、役員を退任したような場合には、それまでの掛け金と納付年数に応じて算出され共済金(解約手当金)が支払われることになります。この場合、共済金には税金が課されることになりますが、その場合でも、これは退職所得として扱われるため、通常の事業所得などとは異なり、税金が大幅に軽減されます。具体的には、以下の計算式となります。

【勤続年数が20年以下の場合】
 勤続年数に40万円を乗じた金額
【勤続年数が20年を超える場合】
 800万円+70万円×(勤続年数−20年)

で計算した金額が控除されます。さらに、退職金額(共済金額)からこの控除額を引いた額のさらに2分の1が所得金額とされます。

④掛け金は事業者が自由に設定できる

掛金月額は、本人が1,000円から7万円までの間で、500円単位で自由に設定可能となっています。したがって、事業規模や収入額に応じて、無理のない範囲で掛け金を設定することが可能となり、経営を圧迫することがありません。また、その金額の変更も500円単位で増減できるため、事業規模の拡大等に応じて当初の掛け金を増額変更したり、業績が悪化したりした場合には減額変更することも可能となっています。さらに、掛け金を前納することも認められており、その場合には一定割合の前納減額金を受け取ることもできます。このように、掛け金についてはかなり自由度が広く、事業等の状況に応じて設定・変更することが可能です。

⑤契約者貸付制度の利用

共済の加入者については、契約者貸付制度が設けられており、もしものときに、事業資金を借り入れすることができます。借入限度額は、解約返戻金の7割から9割(掛金納付月数によって決定)で、10万円以上2,000万円内の範囲で、5万円単位で借り入れすることが可能となっています。借入期間については、100万円以下の場合には6カ月または12カ月、300万円以下の場合はこれに24カ月が加わり、最大で60カ月まで設定することができます。返済方法については、借入期間が12カ月までのときは期限一括返還、借入期間が12カ月を超える場合には6カ月後との元金均等割賦償還となっています。利率は年1.5%と低く設定されており、事業者にとっては万一の場合に非常に有効な資金調達手段と言えます。

小規模企業共済のデメリット

小規模企業共済制度については上記のようにメリットが数多くありますが、以下の様なデメリットもあります。

①加入期間が短い場合には元本割れが請じる可能性がある

掛金納付月数が6カ月未満の場合には、共済金を受け取ることができません。また、掛金納付月数が12カ月未満の場合も、任意解約した場合には解約手当金を受け取ることができません。掛け損ですね。さらに掛金納付月数が240カ月(20年)未満で任意解約した場合には、支払われる解約手当金が掛け金の額を下回る場合があります。掛金納付月数自体は240カ月を超える場合であっても、途中で掛け金を増減した場合には、任意解約した場合の解約手当金が、掛け金の合計額を下回る場合がありますので注意が必要です。元本割れをしてまで加入する必要がないと判断する前に、節税メリットと比較してみると良いかと思います。

②共済金には税金が課される

すでに、上記のメリットの箇所で述べたとおり、共済金には、通常の事業所得からは軽減されているとはいえ、一定の税金が課されることになります。したがって、小規模企業共済の制度は、税金を完全に免れることできる制度ではなく、あくまでも、税金を軽減し、または先延ばしにできる制度に留まるということを認識しておく必要があります。

小規模企業共済への加入方法

上記のメリット・デメリットを総合的に勘案し、もし加入したいと思ったら早めの加入をお勧めします。しかし小規模企業共済制度に加入するには、以下のいずれかの要件に該当する必要があります。

①建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)
 不動産業、農業などを営む場合は常時使用する従業員の数が
 20名以下の個人事業主または会社等の役員
②商業(卸売行・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)
 を営む場合は常時自使用する従業員の数が
 5人以下の個人事業主または会社等の役員
③事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員
 常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
④常時使用する従業員の数が20人以下であって
 農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
⑤常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人
 税理士法人等の士業法人の社員
⑥上記①と②に該当する個人事業主が営む事業の経営に
 携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

加入を検討する際の注意事項

加入要件としては、従業員の人数の要件が定められており、事業内容によっては5人~20人までとなっています。そのため、事業規模が大きくなると、小規模共催に加入することができなくなってしまいます。しかし、安心してください。上記要件を満たし小規模企業共済に加入した後に、事業規模が拡大して従業員数がこれらの要件に定める人数を超えた場合については、加盟を継続することが認められています。つまり、上記の要件はあくまでも「加盟時」における要件であって、加盟継続の要件ではないということになります。

申込窓口

郵送による申込等は受け付けていません。小規模企業共済の加入手続きは中小機構が業務委託契約を結んでいる団体、または、金融機関の窓口で行うことになります。具体的な手続きは窓口によって異なります。委託団体としては、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、事業協同組合、青色申告会、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、アクサ生命保険株式会社、となっています。また、金融機関としては、都市銀行、信託銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合、商工組合中央金庫、農業協同組合、となっています。

必要書類

必要書類は以下のとおりです。

・契約申込書
・預金口座振替申出書
・添付資料として、以下の書類
・個人事業主の場合
・確定申告書の控え
・役員として登記されていることが確認できる
 3カ月以内の登記事項証明書(会社の役員の場合)
まだ確定申告をしていない場合には開業届の控えの提出を求められます。

申込後の流れ

上記の申込窓口で加盟の申込をすると、約40日後に中小機構から「小規模企業共済手帳」と「小規模企業共済制度加入者のしおりおよび約款」が郵送されてきます。

小規模企業共済を解約したいと思ったら?

小規模企業共済に加入した後で、解約したいとなった場合にどのような手続きが必要となるのでしょうか。手続きとしては、所定の「共済金等請求書」「退職所得申告書」「預金口座振替解約申出書件委託団体払解約申出書」に必要事項を記入するとともに、「共済契約締結証書」およびマイナンバーを確認できる書類(ただし、解約手当金の額が100万円以下の場合は不要)を中小機構宛に郵送します。約3週間くらいで、指定の預金口座に解約手当金が振り込まれます。

節税の例

A社長:月額100 万円(年間1,200 万円)の役員報酬
    小規模企業共済加入20 年間

年間84万円の小規模企業共済に入れば個人にかかる税金は毎年約20 万円安くなる

これが20年間続けば20 万円×20 年=400 万円

20 年後に社長を辞めたときの解約返戻金:約1,850万円

この1,850万円に対する税金は約60万円

400 万円-60 万円=360 万円もの節税ができる

節税ができて老後資金も確保できる

まとめ

以上、小規模企業共済の制度について見てきました。この制度については、デメリットもありますが、それを上回るメリットがあるため、短期で事業を辞める可能性がある場合を除いては加入することに大きなメリットがあると言えます。その際、従業員数の要件があるため、事業が軌道に乗ってから加入しようという形ではなく、早期に加入した方が良いでしょう。また実際の共済金等についても、掛金納付期間の長短が金額に影響することからも、早期に加入して、掛金納付期間を可能な限り長期とすることが、この制度を利用する上では重要なポイントになるかと思います。

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