社員旅行は嬉しい楽しい節税対策

税金の知識

社員旅行が節税につながるのであれば、会社にも社員にも優しい節税ですよね。社員の福利厚生に役立てながらも、会社にもメリットがある社員旅行。使わない手はないですよね。しかし、社員の社員旅行離れが進んでいるというニュースも耳にしました。社員旅行を福利厚生費とするためには、いくつか条件があります。そこには参加率も。仕事とプライベート。時代は流れています。

社員旅行のメリット

社員同士のコミュニケーションアップ

職場と異なる環境を共にすることで、社員同士のコミュニケーションが活性化し、信頼関係の構築につながります。気の知れた社員同士で旅行することで、意外な一面を知れたり、仕事においても部署の隔てなく会話ができるなどの良い効果が期待できます。

福利厚生費として計上でき節税につながる

社員旅行が経費として認められるのは、ホテルなどの宿泊費用だけではなく、往復交通費、食事代、旅行保険料、観光費用など広い範囲に及びます。一定の条件を満たすことで「福利厚生費」として計上できるため、非常に大きな節税効果があります。交際費は、損金算入額に制限がありますが、社員旅行は福利厚生費として認められれば、全額損金算入できるという違いがあります。また、社員旅行の費用を現金で社員に支給すると給与課税されてしまい、従業員は所得税や社会保険料の負担が増えてしまいます。しかし、福利厚生費として会社が負担すれば給与課税はされません。社員旅行が事業年度内に実施されていれば、旅行費の支払いが翌期になったとしても、当期の費用として計上することができます。

旅行積立金は給与から控除できる

社員旅行にかかる費用については、あらかじめ従業員の給与から「旅行積立金」として控除して積み立てることができるので、従業員にとっての負担感が軽減されます。ただし、賃金については労働基準法による「全額払いの原則」があるため、給与から控除するためには、事前に労使協定を締結している必要があります。労使協定で定めずに給与から控除してしまうと、労働基準法違反となってしまいます。

福利厚生費として認められる3つの条件

社員全員に平等に与えられるのが福利厚生です。したがって福利厚生費として認められるためには、すべての従業員・役員を平等に取り扱い、社会通念上妥当な内容であるために、以下の3つの条件を満たす必要があります。

4泊5日以内の旅行であること

福利厚生費として全額損金算入するための社員旅行の期間については、次のように制限されています。

国内旅行:旅行期間が4泊5日以内であること

海外旅行:海外での滞在日数が4泊5日以内であること

参加割合が全体人数の50%以上であること

社員全体の50%以上が社員旅行に参加していることが条件となります。この社員全体には、正社員だけでなく非正規雇用のパートやアルバイトも含まれます。また、工場や支店、事業所ごとに社員旅行を実施する場合については、それぞれの職場ごとの人数に対して50%以上参加することが条件となります。

会社負担は1人あたり10万円までであること

社員旅行の場合は、その旅行によって従業員が得る経済的利益が少額の場合は、給与課税が行われません。いくらが少額として判断されるのかについて、上限金額等は法律で明確に規定はされていません。過去の判例や国税庁の示している事例では、社員1人あたり10万円程度が会社負担であれば給与課税されないようです。

No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁

福利厚生費と認められないケース

条件をすべて満たしていたとしても、以下のようなケースについては社員旅行に該当しないと判断され、福利厚生費として認められない可能性があります。

プライベートな旅行と判断された場合

会社指定の旅行代理店を使って予約しているが、従業員が自由に行き先や旅行日程などを決めている場合にはプライベートな旅行とみなされてしまい、従業員の給与所得として課税対象となる可能性があります。

成績優秀者へのご褒美旅行の場合

成績優秀者に限定して社員旅行を実施することは、参加者を限定することになってしまい「参加割合が全体人数の50%以上」という条件を満たさないので、福利厚生費としては認めらず、その旅行にかかる費用は従業員の給与所得として課税されます。

特定の目的旅行の場合

例えば、旅行の目的をゴルフに限定した場合、旅行に参加してもゴルフには参加できない人がでてきます。この場合、社内行事としては一般的ではなく、福利厚生の目的から外れると考えられ、ゴルフを行う特定の従業員に対して課税される可能性があります。

取引先を招いた接待旅行の場合

取引先を招いた接待、供応、慰安などを目的として行う旅行については、社員旅行ではなく接待の側面が強いため、交際費の対象となり、原則全額損金不算入となります。

役員のみ参加する旅行の場合

役員のみを対象とした旅行は、参加者を限定することになってしまうため、福利厚生費の対象になりません。その旅行の費用は「役員賞与」として課税され、損金不算入になります。ただし、事業計画を検討するための視察旅行については、会議をした実態などが伴っていれば、通常要する費用の範囲においては福利厚生費以外で損金算入することが可能です。

不参加社員への現金支給をした場合

社員旅行に参加しなかった従業員に対して、旅費相当の現金を支給すると、給与所得として課税対象となります。現金以外でも、旅行券やクーポン券など換金性の高いものを現物支給した場合も、給与所得とみなされます。

従業員の家族が同行した場合

従業員の家族の旅費も会社で負担した場合は、従業員である本人の分も含めた家族全員分の旅費がその従業員の給与所得として課税されてしまいます。家族を社員旅行に同行させたい場合については、家族分の旅費は従業員に実費で支払ってもらう必要があります。

家族が従業員の場合

家族経営の会社で、家族も従業員として業務にあたっている場合は、旅費を会社が負担しても全額損金として計上することが可能です。ただし、社員ではない子供が旅行に同行する場合については、子供の旅費分は実費で支払う必要があります。

注意点

不参加の社員には積立金を返金する

旅行積立金として従業員の給与から控除しているケースにおいて、従業員が社員旅行に参加しなかったり、参加する前に退職する場合は、従業員に費用を全額返金する必要があります。ただし、控除名目が親睦会費であれば、あくまで会費扱いになるので、親睦会の活動に不参加だとしても返金する必要はありません。

強制力を働かせない

社員旅行については、原則として参加を強制することは難しく、強制しようとすると業務命令扱いとなり、業務として賃金の支払い義務なども生じてくる可能性があるため注意が必要です。しかしながら参加率50%以上も遵守したいところです。不参加の従業員が多い場合については、社員旅行の実施を見直すことも考えなければいけなくなります。

積立金がある場合は消費税の取扱いに注意

従業員から旅行積立金を積み立てていて、実際の旅行費用との差額を会社が負担している場合、旅行積立金部分については従業員から預かっていたものを支払っただけなので、課税仕入には該当しません。一方で、会社が負担した部分については、課税仕入等、消費税の処理が必要になります。

社員旅行の証拠を残しておく

税務調査が入ったときに、実際に社員旅行をした実態があることを証明できるよう、証拠資料を保存しておく必要があります。具体的には、旅行代理店からの請求書や領収書、参加者名簿、旅行パンフレット、集合写真、旅行日程表や旅のしおり等が挙げられます。

まとめ

社員旅行を実施することは、従業員同士の親睦を深められるとともに、福利厚生費として全額損金算入できるという、会社にとって非常に大きなメリットがあります。ただし、福利厚生費として認められるためには一定の条件を満たす必要があるため注意が必要です。みんなが楽しめながら、節税につながる夢のような節税対策ですので、ぜひ活用したいところです。

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