消耗品の購入が節税につながるという話

税金の知識

利益が出ると税金も多く取られてしまいます。「よし、消耗品を購入して経費に計上しよう!」と考える経営者も多いと思います。今回は消耗品を計上する際に注意することをまとめていきます。どの程度節税になるのでしょうか。

消耗品を経費に計上する要件

消耗品等は原則として、「購入した事業年度ではなく消費した事業年度の損金として処理する」ことになっています。買ったけれどまだ使っていない消耗品については、原則として損金計上できません。しかし、すべての消耗品について、期末在庫数量をチェックし使用したかどうかを確認するのは、業務が煩雑になってしまいます。そこで、消耗品等については、以下の要件を満たしていれば、購入した事業年度の損金として計上できる旨が規定されています。 (法人税法基本通達2-2-15)

(1) 各事業年度毎に概ね一定数量を購入していること
(2) 毎年経常的に消費するものであること
(3) 毎期継続して購入した事業年度の経費として処理(損金計上)すること

消耗品とは

消耗品費は、基本的に金額が10万円未満の物品の購入費用に計上する経費のことを言います。日用品や機材等、ビジネスに必要なものや業務で使用するものであれば、消耗品費として認められます。

消耗品として計上できるもの

具体的には

・文房具、事務用品(ボールペン、封筒、用紙等)
・日用雑貨(石鹸、トイレットペーパー、タオル、清掃用具等)
・オフィス備品(ホワイトボード、インク、事務机、キャビネット等)
・パソコン関連用品(パソコン、タブレット、マウス、キーボード等)
・広告宣伝用の印刷物等

会社によっては文房具やインクなどは、事務用品費や雑費などとして計上する場合もあります。

10万円以上で経費にできるケース

通常、購入費用10万円以上のものは資産とみなされます。しかし、法人税法でも使用期間が1年未満の場合、すべての企業において取得価額に関係なく、経費計上が認められています。具体的には下記のような費用が考えられます。

・1年未満の期限となっている特許、商標権、意匠権、商標権の契約使用料
・1年未満しか放映しないことが決まっているテレビCMの制作費用
・試験、実験で一時的に使用する備品や器具
・イベントなどで数か月しか使用しないことが分かっている備品

使用可能期間が1年未満である減価償却資産について国税庁からの通達

「法人の属する業種において種類等を同じくする減価償却資産の使用状況、補充状況を勘案して一般的に消耗性のものと認識されている減価償却資産で、その法人の平均的な使用状況、補充状況(※)からみてその使用期間が1年未満であるものをいう。この場合において、種類等を同じくする減価償却資産のうちに材質、型式、性能等が著しく異なるため、その使用状況、補充状況等も著しく異なるものがあるときは、当該材質、型式、性能等の異なるものごとに判定することができる。(昭49年直法2-71「8」により改正)」

(※注:平均的な使用状況、補充状況等は、おおむね過去3年間の平均値を基準として判定する)

(引用:国税庁通達 第2款 少額の減価償却資産等(使用可能期間が1年未満の減価償却資産の範囲)7-1-12)

第2款 少額の減価償却資産等|国税庁

消耗品を経費計上する場合の注意点

消耗品や日用品の購入費用を経費にするには、いくつか注意点があります。ポイントをおさえて適切に節税できるようにしたいものです。

事業と無関係の日用品や消耗品代は経費にできない

ビジネスとひもづけできるか、がポイントになります。経費とするには「事業で使用するもの」でなければなりません。ビジネスに全く関係ないプライベートな日用品、消耗品にかかった費用は少額でも消耗品費にはできないので注意しましょう。モラルの問題ですね。切手やハガキや商品券などは期末に残っているものは「貯蔵品」として経費から除かれますのでご注意ください。

消耗品費に計上する領収書やレシートの保管

経費ろして計上するには、当然のことですが、領収書やレシートの保管をしっかり行うことが重要です。税務調査が入ったとき、消耗品費で計上していても、証拠となる領収書やレシートがなければ、否認されてしまうからです。領収書は都度、月別でクリップ等でまとめて保管しておきましょう。さらに付け加えると、消耗品費や接待交際費など種類別に分類しておくと、後から確認もしやすくなります。領収書は5年~7年保管する義務があるので、最終的にはファイルにまとめ、保管するようにしましょう。

誤った経費計上はペナルティの対象になる

仕事に関係ない消耗品や、領収書のない日用品等、誤った経費計上をしていると、税務調査が入ったときペナルティの対象になります。どのようなペナルティなのでしょうか。

①過少申告加算税

本来の税額より少ない額を申告していた場合、正しい税額のうち、未納分に対し10%が加算

②無申告加算税

納付すべき税額を納めていなかった場合、正しい税額のうち50万円まで15%、50万円を超える部分は20%が加算

③重加算税

偽装、隠ぺい等により悪質だと判断された場合に適用。過少申告加算税が対象の場合は重加算税35%が加算、無申告加算税が対象となる場合は重加算税40%が加算

もしペナルティが課せられた場合、銀行融資にも影響を及ぼすことがあります。銀行の融資担当者は、決算書だけでなく法人税の申告書もチェックし、適切に経営されているのかを監視しています。特に重加算税は悪質と判断された場合に課せられるペナルティのため、銀行側の心証にも影響を与えやすく、資金繰りが滞る可能性も秘めています。

税務調査では、消耗品費の中に「資産」として計上すべきものが紛れていないかチェックされることが多いと言います。全体で消耗品費の占める割合が多い場合は、会計処理の間違いがないか確認した方が良いかと思います。間違いがなくても、消耗品費について適切に証明できるようにしておくことがペナルティ回避の基本となります。

消耗品を節税につなげる具体例

どの程度節税になるのかイメージしてみます。

例えば、350万円の利益が出そうな場合、何の節税対策もしなければ、納める法人税は350万円の21%で73万5千円になります。そこで、当面必要な消耗品を50万円分購入したとすると、利益が50万円圧縮され300万円となるため、法人税は63万円となり、10万5千円の節税になります。言い換えれば、50万円分の消耗品を10万5千円引きの21%OFFで安く買えたということになります。

もう1つ例を出します。これはさらに賢いやり方です。法人税率の変わり目で消耗品を購入する方法です。利益が400万円以上になると法人税率が23%に上がり、800万円以上になると34%に上がります。この400万円と800万円の税率の変わり目で、消耗品を購入すれば、税率を下げることができるため、ダブル効果によって、より高い節税が期待できます。800万円を超えると税率が一気に上がります。23%から34%に11%上がってしまいます。このタイミングで例を挙げてみます。

例えば、850万円の利益が出そうな場合、法人税は193万円となります。850万の利益の場合、800万円を超えている分の50万円については、34%の税率で17万円分の節税効果が期待できます。つまり50万円分の消耗品購入は、実質33万円の34%引きで購入できたということです。

まとめ

消耗品の節税効果についてまとめましたが、何でも購入すればよいかと言うとそうではありません。「会社から現金をなくす」ことは避けるべきです。バランスが重要ということですね。節税対策のために、当面必要のないものまで、大量に購入したら、会社の資金が滞り、本末転倒になってしまいます。1年間に使う消耗品費が10万円の会社では、その5年分に相当する50万円の消耗品購入が適切かどうかは考えなければいけません。当面必要のないもののために多額のお金を使うということは、その分、会社から現金がなくなってしまうということです。会社は急に現金が必要になることもあります。節税につながりお得だからと言って、必要のないものを大量に購入することは、単なる無駄遣いになってしまいます。優秀な経営者は、バランス感覚に優れた経営者かと思います。

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