月末退職と月中退職の違いはなに?賞与や社会保険への影響は?

保険の知識

入職して定年まで同じ職場で勤務する人ってどのくらいいるのでしょうか?

様々なデータがありますが男性で約32%、女性で約6%だそうです。

男性の3人に2人は一度は退職した経験があるというデータです。

できれば高給料でずっと同じ場所で働きたい、けど、現実はそうはいかないみたいですね。

そこで今回は退職日シリーズ第2弾。

月末退職と月中退職の違いについてまとめていきます。

暗黙的に15日付けや末日付けの退職が多いですが、中途半端な月中に退職するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

社会保険料からみる退職日

社会保険。

知っているようで良く知らない。それが社会保険。

特に働き始めの社会人なんて全く無知の人が多いのではないでしょうか。

私がそうでした。

この社会保険について考えていきます。

一定の条件を満たした労働者は、厚生年金保険に加入する義務があります。

年金の仕組みについては別記事をご覧ください。

年金制度を分かりやすく徹底解説します!~いちから学ぶ年金制度を図を用いてまとめます~
年金制度は3階建てで説明されます。図をずっーと見ると理解がしやすいかと思います。ずをずっーと。

厚生年金保険の被保険者となる資格が得られるのは『入職したその日』です。

資格を喪失するのは『退職した日の翌日』です。

資格喪失日とは会社の健康保険協会の資格(被保険者)を喪失する日で、退職日=資格喪失日ではなく、退職日の翌日が資格喪失日となるルールがあります。(健康保険法第36条)

退職日ではない点がポイントですね。翌日まで有効ということです。

次いで社会保険料の支払い義務を見ていきます。

社会保険料の支払い義務が発生するのは『資格取得日を含む月』から『資格喪失日を含む月の1つ前の月まで』です。

おっと、いきなり複雑になってきました。

例に出して考えていきます。

8月30日に月中退職した場合

資格喪失日は翌日の8月31日

社会保険料の支払いは『資格取得日を含む月』から『資格喪失日を含む月の1つ前の月まで』でした。

『資格喪失日を含む月の1つ前の月まで』、つまり資格喪失日8月31日の1つ前の7月までが社会保険料の支払い義務があります。

被保険者の資格喪失日が存在する月の保険料は算定しないルールがあります。(健康保険法第156条)

【8月31日の末日に退職した場合】

資格喪失日は翌日の9月1日

社会保険料の支払いは資格喪失日9月1日の1つ前の8月までとなります。

この違い分かりますか?

退職日が30日か31日か。

1日の違いで社会保険料の支払い義務が7月までと8月までの1月変わることになります。

「じゃあ、支払いが多くない7月までにしたいので8月30日の退職の方が有利ですね」

・・・・・・・・・

とは一概にはなりません。

えっ、どういうこと?

8月30日退職⇒社会保険料7月まで

8月31日退職⇒社会保険料8月まで

8月31日の月末に退職をした場合、給与の締め日によっては最後の給与で7月と8月の合計2か月分の社会保険料が天引きされます。

「やっぱり、31日退職の方が引かれる額は多いじゃん!」

って思いますよね。

でもこれは「保険料を2か月分支払ったから損」というわけではありません。

自営業等が加入する国民年金保険と会社勤めの方が加入する厚生年金保険では、将来もらえる年金額は厚生年金の方が高くなります。

しかも会社勤めの場合は健康保険料の半額を会社が負担してくれています。(健康保険法第161条)。

退職日を末日にすることで、会社が保険料を負担してくれて、かつ将来もらえる年金額が高い厚生年金に1ヶ月長くできた、と捉えることもできます。

なるほど。

そして、月中退職は退職月の保険料を支払わなくて良い、と言うことではありません。

在籍していた会社に引かれる保険料額は1月分少ないですが、自分の人生は退職してからも続いていきます。

退職後も継続して社会保険料を払い続けなければいけません。

ちょっとシミュレーションしてみます。

退職すると

①任意継続保険料として全額支払う

②国民年金保険に切り替える

③扶養に入る

①②③のどれかを選択することになります。

③は保険料支払いなし

②は保険料額が異なるため比較できず

ここでは①任意継続保険料を選択したと仮定して比較していきます。

※①任意継続保険料
任意継続とは、健康保険の被用者保険の被保険者が退職した後に、個人として引き続き被用者保険に加入することです。任意継続に加入できるのは2年間で、退職日の翌日から20日以内に加入申請しなければいけません。扶養家族の保険料負担はありません。

(仮のケース)

会社在籍中の健康保険料全額21,780

会社と従業員とで10,890円ずつ折半し保険料を納付

退職後は退職した従業員が任意継続保険料として健康保険料全額21,780円を2年間支払う

8月31日(月末退職)
資格喪失日:9月1日
保険料:8月まで
任意継続保険料:9月から
8月30日(月末以外退職)
資格喪失日:8月31日
保険料:7月まで
任意継続保険料:8月から

この例では退職日が1日異なるだけで約1万円の納付額の差が生じています。

たかが1万円、されど1万円。退職日1日で1万円の差。

年末調整から見る退職日

毎月給与から天引きされている所得税は、追加徴収の手続きの煩雑さを回避するため、多めに給与から天引きされています。

最終的には年末調整で支払い過ぎた税金の精算を行います。

この年末調整ですが、12月31日時点で会社に在籍し必要事項を記載し会社に提出すれば、会社が手続してくれます。

助かりますよねー。

退職日が12月31日以前であれば年末調整の対象から外れるため、自分で税金の精算を行わない限り、所得税は多く納税している状態のままとなってしまいます。

納め過ぎている所得税を取り戻すには「還付申告」を行なうことで解消できますが、退職日によっては自分で確定申告しなければならず面倒くさいですよね。

12月頃の退職を考えている方は頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

賞与支給から見る退職日

月給制の場合、退職日が賞与の支払日より後であれば賞与を受け取ることができますが、支払日前に退職すると賞与が受け取れない可能性が高くなってしまいます。

年棒制の場合は、年棒額を12等分した額を毎月支給するのが一般的ですが、年棒額をより細かく等分し、そのうちの一部を賞与として支給すると定めている場合もあります。

後者であれば賞与の額がはっきりわかっているため、賞与の支払日よりも前に退職したとしても在籍期間に応じた賞与の支払いを受けられる可能性はあります。

※雇用契約書や就業規則などに賞与支払いに関する規定が優先

まとめ

退職日は本人が決めるものです。

会社からここまでいて欲しいと言われても、本人が決めるものなので自分でメリット・デメリットを勘案し決めていくと良いかと思います。

最も気をつけなければいけないのは、次の働き先がないまま退職し、社会保険料納付の空白を作らないことです。

もっと早くから学んでいればよかった。

国語、数学、理科、社会、英語と同等に保険、税金、経済も必須になってれば良かったのに。

と他人任せな考えになっていますが、必須になってればなっていればで学生時代の嫌いな教科ワースト3にランクインしていたのは間違いないでしょう。

今では学びたい項目ベスト3です。独学でも学ぶことは重要ですね!

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