個人事業主が出張を経費にするには「実費」部分だけが対象となりますが、会社であれば「出張日当」を支給することで実費以外も経費とすることができます。しかも、この日当は課税対象ではないため、個人の所得にならないという特典もあります。この特典は結構使えますよ。
出張日当を経費にするには
出張日当を経費にするためには、法人でなければいけないという縛りがあります。ですので、残念ながら個人事業主はこの出張日当を経費にすることはできません。そしてもう1つ、出張日当を経費にするためには「旅費規程」を作成しないといけません。
会社も個人にも優しい出張日当
会社の経費という観点からすれば、旅費日当ではなく給料で支給しても、会社の法人税等の節税にはつながります。しかし、給料で支給を受けた側は所得税・住民税が課税されてしまい、社会保険料の負担も増えてしまいます。会社には優しいが、個人には厳しいということになります。
そこで「出張日当」という位置づけが有効になってきます。給料支給ではなく、「出張日当」という形で支給されると、なんと支給を受けた側は課税されず、所得も増えないため社会保険料に変化はありません。
このように非課税で支給を受けることができるため、会社にも個人にも優しいということになります。支給する側は経費、支給を受ける側が非課税という「出張日当」は是非活用したいところです。
消費税控除ができる「出張日当」は経営者に優しい
通常、会社は売上などにかかる消費税を預かり、経費にかかる支払った消費税と相殺して、その差額に相当する消費税を税務署に納めるようになっています。その際この出張日当については、消費税を払ったものとして、納付すべき消費税から差し引くことができるというメリットがあります。専門用語で課税仕入と言います。えっ、会社は経費として扱ってもいいし、個人は非課税の所得として支給されるし、さらに消費税控除もしてもいいんですか。ありがたやー。3本の矢ならぬ、3本の利。
社長が得する具体例
【A社長】 出張日当を支給なし 出張経費分として役員報酬に毎月10万円追加支給
このようなA社長が出張日当を受け取れるようにした場合 ・役員報酬月額10万円減額(役員報酬減額分は出張日当で支給) ・所得税率2割・給与所得控除1割で算出したと仮定 ※社会保険料考慮せず
【会社】役員報酬・出張日当は経費で扱える。
役員報酬が下がった分の補填として出張日当を充てるため、プラスマイナス0となり法人税等は変化なし
消費税の負担は約9万円(1,200,000/1.08✕0.08=88,888円)軽減
【A社長】役員報酬は年間120万円下がりますが、出張日当で補填されるため手取りには影響なし
しかし役員報酬が年間120万円下がるため、給与所得控除後の所得は108万円減額
108万円の2割が所得税、1割が住民税で合計3割の約32万円が1年間で節税できます
※出張日当が1万円の場合で月に12日出張した場合であれば、月12万円支給され、年間144万円の出張日当が非課税で支給されます。役員報酬が120万円下がったとしても、144万円が非課税で支給されるだけでなく、年間約32万円も節税につながるというメリットが大きい制度です。
日当の妥当な金額設定は?
日当の妥当な金額はいくらなのでしょうか?
結論から言うと「社会通念上妥当な金額」で設定されることと言えます。あまりにも社会通念からかけ離れた金額であれば、税務調査の時に修正申告の慫慂を受けることになってしまいます。所得税法基本通達9-3で記載がありますが、役員と従業員の適正なバランスや同業者との比較について述べられているのみで、具体的な金額は記載されていません。
出張日当を支給する際の注意点
①旅費規程の作成
②出張報告書の作成
③日当の清算日
出張日当は出張に係る交通費や宿泊費等の経費のように、外部から領収書が発行されるわけではないため、税務署対策のために出張報告書や日当の清算日を記載し、客観的な証拠を残しておいた方が良いでしょう。
④出張が多い会社は出費がかさむ場合も
社長や役員のみに出張日当を支給することはできず、社員全員を対象としなければいけません。出張が多い会社は節税を超える支出になる可能性もありますので注意が必要です。
まとめ
会社を設立した時に、従業員が社長1人。という状況もあるかと思います。このように小規模の時や社長以外の出張が少ない時は、大きな節税対策になるかと思います。会社の状況を踏まえて、適切に判断していくことが重要かと思われます。
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